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「リリィー、前に、あたしをお嫁さんにはできないって言ったよね」
「え?そんなこと言ってないよ」
「ううん、言うんだよ。これから。そう…2年後、くらいに」
6年後の少女と風
とある日の夕暮れ、いつも何かしらおかしな目に遭う青年、リリィーは今日もまたいつもと違う光景を目の前にし、困惑していた。
「あたしはラナ。リリィーがよく知ってるラナだよ」
リリィーの目の前には、自分をラナと名乗る少女が立っていた。正確に言うと、少女と形容するには少し大人びている。
「俺がよく知ってるラナはもっと小さくて子供っぽいんだけどな?」
「うん、だって、今のあたしは6年後のあたしだから」
「6年後?」
そうだよ。と微笑み、少女はリリィーへ1歩近づいた。
「あたし、未来から来たの」
その一言に、リリィーは言葉も返せず片方の目を丸くした。未来から来る?そんなSF漫画のようなことが起こるはずがない。きっと何かのドッキリにでも仕掛けられてるんじゃないかと、青年は警戒した。
「そ、そうか。それなら、6年後の俺はどうしてるの?ほんとうに未来のラナなら分かるよね?」
「リリィーはもういないよ」
「…え?」
「6年後にリリィーはもういない」
予想外の言葉を突きつけられ、困惑した状況にさらに困惑が積み重なる。リリィーはなにか言いかけたが、その口からは何も言葉が出なかった。
「だからね、あたし、今リリィーに会えてすごく嬉しい。今のあたしはリリィーに会うこともできないから」
「そう言われても、俺は…」
「うん、分かってる。勝手なことをしてほんとうにごめんね」
ラナはかつての面影と変わらない憂いの表情をした。リリィーの記憶の中のラナと重なり、この女性が本当にラナなんだと感情が訴えかけてくる。
「リリィー、前に、あたしをお嫁さんにはできないって言ったよね」
「え?そんなこと言ってないよ」
「ううん、言うんだよ。これから。そう…2年後、くらいに」
「えっ?」
一瞬、憂いの表情を見せたラナは、なにか考えたあとに困った笑顔でそう言った。
「いまのあたしならもう、いいでしょ」
「は、はあっ…!?」
ラナはすぐに、冗談だよ。といつものふざけた笑顔をこぼしたあと、どこか真剣な表情を見せた、気がした。
どことなくリリィーの鼓動は早くなっていた。未来から来たという信じられない言葉、6年後自分はいないという事実、そしてラナの言葉。全て頭で理解は追いついていなかったが、身体に痺れる感覚があった。
「もうそろそろ時間かな」
ぼそりとつぶやき、ラナはリリィーに背を向けた。その背中は、リリィーの知る背中よりも数倍大きな背中になっていた。
そして、一歩前へ踏み出すラナに、リリィーは思わず声をかけていた。
「ま、まって」
「未来であたしを捜して」
少女はそう一言残し、次の瞬間にはどこかへ消えてしまっていた。
虚しくも空を掴んでいた手を撫でる風は、青年をあざ笑うかのように通りすぎた。