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今年の夏休みの課題提出のために書いた童話です。主人公のイメージは、ミカさんですwww まあイメージなだけでミカさんというわけではない……はず。
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愛を渡す魔法使い
とあるこの街の外れには、大きな森がありました。この森はあまりにも大きいため誰も奥深くまで行ったことはありません。そのため、森の奥に何があるのか知ってる人はあまりいませんでした。
そんな森の奥には、実は大きなお屋敷がありました。その大きなお屋敷には、ミカという魔法使いがたった一人で住んでいます。魔法使いのミカはずっと一人で森の奥に住んでいるため、人と話すことはおろか、何年も人と顔を合わせたことすらありません。そんなミカが毎日何をして過ごしているかというと、年中真っ黒のコートを着て、毎朝花に水をやったり、鳥と話したり、お屋敷の奥で新しい魔法の開発をしたりして過ごしています。こんな森の奥深くにもごくまれに人間が迷い込むことがありますが、ミカは人間を恐れているため、逃げるように物陰へ隠れてしまいます。もしも見つかった時には、お屋敷のドアの影から相手を警戒して睨みつけます。それくらい、ミカは人を嫌っているのです。
ある晴れた朝。ミカはいつもの日課で、花に水をやっていました。すると突然草陰から音がして、一匹のうさぎが飛び出してきました。小さくて、ふわふわの白いうさぎです。ミカは、黒い自分と似てないな……と思いました。人間は嫌いでも、動物は好きな彼はうさぎを抱き上げ、撫でていました。
ガサッ
また、草陰から物音がします。今度はなんだろう?と不思議な面持ちで見つめます。
「!?」
草陰から出てきた姿を見てミカは驚きました。なんと、それは小さな女の子だったのです。
「あたしのうさちゃん!」
女の子は、うさぎを抱いているミカに向かって叫びます。突然の出来事に混乱しているミカは、何も言葉が出ずうざぎを離して、急いで逃げ出しました。
「……あなたは、だれ!?」
女の子も驚いて、黒いコートの彼を追いかけました。
ミカは、なんとかして女の子を追い返そうと方法を考えました。とりあえず、何かする前に言って帰ってもらおうと思いました。
「あの……」
普段人と喋らないミカは、自分を追いかけてきた女の子に向かって、物陰から小声で言いました。
「帰れ……」
しかし、普段喋らないためあまり大きな声が出ません。女の子も、ミカの声に気付いてもいませんでした。
「ねぇ?なんでそんなところに隠れているの?あたしはメイっていうの!あなた、もしかして一人なんでしょ?お友達になりましょう!」
メイという女の子は、物陰に隠れるミカに突然話し掛けました。
「……!!」
話し掛けられたことに驚いて、ミカはまた逃げ出しました。すぐに逃げ出してしまうミカを不思議に思うも、さらに好奇心が沸いてきたメイは、逃げるミカを追いかけました。
ミカは、普段走ったりしないので疲れてしまいました。一度お屋敷に入り鍵をかけて、冷静になって考えると、魔法使いらしく魔法で追い返すという作戦を思いつきました。早速お屋敷の奥の部屋まで行って、魔法を作り始めました。
人を寄せ付けないようにするための魔法に必要な材料は、イノシシの牙半分、スミレの葉っぱ十枚、魔法使いの血三滴、オリーブの実五つ……ミカは、オリーブの実だけ無いことに気がつきます。材料が足りなければ魔法は作れないので、森に出て探してくることにしました。
メイが近くにいないことを確認すると、急いでオリーブの木を探しに行きました。幸いなことに、オリーブの木はお屋敷の近くにあったためすぐ見つかりました。しかし、実がなっているのは木の上。ミカは走るのも大変なくらい運動が苦手です。そんなミカが木を上るのはとても苦労することですが、魔法を作るため、頑張って木に上ろうとしました。しかし、思った以上に悪戦苦闘。一向に木に上れそうにありません。
「あ!黒いおじさん!」
そんな時、ミカはメイに見つかってしまいました。
「黒いおじさん……?」
おじさんという言葉が気にかかりつつも、こっちに走ってくるメイを見てミカは逃げ出しました。またミカに逃げられてしまったメイは、ミカが上ろうとしていたオリーブの木の前で呆然としていました。そして、ここで実を採ろうとしていたんじゃないかと察し、身軽な体でひょいと木に上りオリーブの実をなっていただけ採りました。
「おじさん、これを採ろうとしていたんじゃないの?」
そう言って、メイは採った実を木の下に落としました。それを見たミカは少し戸惑いましたが、急いで木の下まで行き、落ちた木の実を奪い去るように取っていきました。
「あ!おじさん!」
折角採ってあげたのに、何も言わずに盗まれてしまったメイは木の上でぷうと頬を膨らませました。
汚い手だとは分かっていても、欲しかったオリーブの実が手に入ったミカは、また部屋にこもって魔法を作り始めました。何分もしないで出来上がった魔法は、たまごのような形をしている固い物体で、これを投げつけると魔法が発動して、人を追い返せるというものでした。これでやっと追い返すことができる……思わず唇をニヤリと細めて、早速実践するため外へ出ました。
お屋敷の外に出て探すまでもなく、メイの後ろ姿を発見したミカ。チャンスは一度しかない……そう心に言い聞かせ、慎重に近づき、いい距離をとったところで、たまご型の物をメイに投げつけました。
「……ッ!」
その、足を踏み切る音で気配に気付いたメイは、咄嗟に後ろを振り返りました。その瞬間に、魔法が発動して、たまごがはじけました。
「きゃあっ……!」
はじけたたまごから、眩しい光が溢れたためメイは目を瞑りました。ミカは魔法が成功したと確信して、微笑を浮かべました。しかし……
「え……なにこれ?」
魔法が上手く発動したらたちまちメイが追い返されるはずだったのに、何故かそういったことはなにも起こらず、代わりに色とりどりの花びらが舞いました。
「おじさん、なにこれ……!?すごい!魔法みたいなマジックね!」
「……!?」
予想外の展開と、メイの反応にミカは困惑しました。
「おじさん、マジシャンなのね!ねえ、あたしにもっとマジックを見せてよ!」
そう言いながら詰め寄ってくるメイ。ミカはまたしても逃げ出しました。
言ってもダメ、魔法でもダメ。ミカはさらに方法を考えました。そこで思いついたのが、最後の手段。落とし穴を掘って捕獲し、そのまま生き埋めにしてしまうという考え。かなり残酷な作戦だとは思えど、背に腹は変えられないと心に決め早速ミカは穴を掘りに行きました。
簡単な魔法を駆使して、丁度いい落とし穴を作ることができたミカは、落とし穴にメイがかかるのを草むらで隠れて待ちました。メイはずっと、落とし穴の近くをうろちょろしているのになかなか罠にかかりません。ずっと自分のことを探している素振りで、あっちに行ったり、こっちに走ったり……それなのに、上手いこと落とし穴を避けています。
そんな状況にしびれを切らしたミカは、ついに草むらから飛び出しました。自分をエサにしてメイを落とし穴にかけようと思ったのです。
「あ!黒いおじさん!」
メイはすぐに気付いて、ミカの方へ走ってきました。ミカは、よしよし、こっちに来るんだ……と、満足げな顔で一歩を踏み出しました。すると……
ズボッ
なんと、落とし穴の位置をちゃんと覚えていなかったミカが、自分で落とし穴に落ちてしまいました。
「うわあ!おじさん!」
その光景に、メイも驚きます。
「おじさん、大丈夫!?もしかして、あたしがこの穴に落ちないように、体を張って自分で落ちてくれたの……!?」
穴のふちから、ひょこっと顔を覗かせてメイが言います。違う違う、そんなんじゃない!そう思うも、落とし穴からは出れない、叫ぶこともできないミカは、へたり込んでしまいました。
「おじさん、大丈夫?まっててね、今、縄を持ってくるわ!」
メイは健気に、ミカを助けようと縄を探しに行きました。もうどうすることもできないミカは、黙ってうつむきました。
「おじさん!丁度いい木のツルがあったわ!今、近くの木に結び直すから、まっててね」
メイはそう言うと、慣れたように木にツルを結び付け、落とし穴の中に投げ込みました。
「おじさん、これにつかまって上ってきて」
ミカは、こんな人間に助けられて……と悔しい思いをしていました。しかし、ずっと穴の中にいるわけにもいかず、言われたとおりにツルを使って上りました。子供のために作った落とし穴だったのが幸いして、あまり深くなかったためなんとか上りきることができました。
「怪我はない?大丈夫?」
メイに何を話し掛けられても、無言のミカ。
「あら、腕をすりむいてるじゃない!怪我に効く薬草があるはずだから、探してくるわね!」
何も言わないミカのために尽くすメイ。その時、ミカの中でも少しずつ、何かが変わっていくのが分かりました。
「あたしも森で遊んでで、よく転んだりするからこういうのには詳しいのよ!」
メイはそう言って、すぐに薬草らしきものを持って帰ってきました。ミカの腕を出し、慣れたように薬草で手当てをしました。
「はい!これで大丈夫だわ。今日はもう走ったりしないでね?」
メイの表情は、とても満足げな笑顔でした。ミカはずっとうつむいていましたが、このとき、ミカの中の何かが変わりました。
「あ、りがとう……」
「え?」
「ありがとう……」
ミカは照れた仕草で、お礼を言いました。
「え……おじさん!やっと喋ってくれたわね!」
メイは、ミカが自分に話してくれたことに心から喜びました。恥ずかしくなったミカはそのまま立ち上がり、お屋敷に戻ろうとしました。
「おじさん、もう帰っちゃうの?」
寂しそうな声でメイが言います。
「ねえ、また来てもいい?」
呼びかけるメイの声に、ミカは振り返らず小さくうなずきました。
「ありがとう、おじさん」
メイの、嬉しさの溢れた顔いっぱいの笑顔は背中越しのミカにも伝わりました。
「メイ!!!」
「?」
メイが帰ろうとしたとき、草陰から声がしました。
「メイ!!こんなところにいたの!!」
「あっ!おねえちゃん!」
草陰からは、メイがおねえちゃんと呼ぶ女の人が出てきました。
「ずっとこんなところにいたの?おねえちゃん心配したよ?」
「ごめんね……どうしてここが分かったの?」
「あなたのうさぎの足跡を追ってきたのよ」
ミカは、突然の声に思わず振り返りました。そこにいたのは、自分と同い年くらいの綺麗な女性。その美しさに、ミカはつい見とれてしまいました。
「あ、おねえちゃん!このおじさん、さっき会ったの!」
「メイ、おじさんなんて言い方失礼でしょ?……あ、初めまして。メイがお世話になりました。ご迷惑をおかけしませんでしたか?」
メイの姉は、ミカに話し掛けました。しかし、ミカは見とれて何も言うことができませんでした。
「おじ……おにいさん!この人はあたしのおねえちゃんのラムよ!だから、怖がらなくても大丈夫だからね?」
メイがそう言うと、ミカは慌てたように着てる黒コートのポケットを探り、さっきの魔法を作った時の余りのスミレを取り出しました。
「……。」
ミカは、無言でスミレをラムに渡しました。そして、隠れるようにお屋敷の中へ入ってしまいました。取り残されて呆然と立ち尽くしたメイとラム。ラムに渡された紫のスミレに、「愛」という花言葉が隠されていると気付くのは、そう遠くない未来のことでした。
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ミカさん